ギデオン、信者でなくともなんとなく聞き覚えのあるこの名は、クリミナルマインドやスターウォーズの指導者。
元は旧約聖書に登場する士師。
サムソンに次ぐ英雄です。
なるほど、民や兵を導く名としてふさわしいギデオンの生涯のご紹介です。
目次
ギデオン、サムソンに次ぐ聖書の中の英雄
ギデオンとは
ギデオン(Gideon または Gedeon)は『士師記(ししき)』6章〜8章に記される、ヘブライ(イスラエル)人の士師(指導者)。
旧約聖書『士師記』の中でサムソンに次ぐ英雄として語られる、イスラエルの裁判官であり、勇敢な戦士です。
その名は「木を伐り倒す者」→「強力な戦士」を意味します。
ギデオンは、マナセ族(イスラエルの12部族の一つ)に属するアビエゼル族のヨアシュの息子。
貧しい農家の末っ子として生まれました。
このエフラ(オフラ)(パレスチナ)に住む若者がイスラエル人を導く者として神に選ばれ、神の力を持って、わずか300人の部隊で圧倒的な数のミディアン軍に勝利します。
** 士師記 **
士師記(ししき)は、ヘブライ語聖書および旧約聖書の第7巻。
ヨシュア(モーセの後継者)の死後から、サムエル(ダビデに油を注いだ士師)の登場に至るまでの歴史が記されています。
その内容は、「士師」(指導者)たちがイスラエルの民を導くというもの。
『ヤハウェは不忠実な民を一旦は敵に委ね、慈悲を乞う民に指導者を授け、救済を行う。けれど繁栄を享受する民はまたも不誠実な行いに陥いる』ということが繰り返されています。
士師記 ギデオン
イスラエル人はカナンの弾圧に士師・デボラの勝利をもって解放されます。
その後40年間の平和を享受し、再び神(ヤハウェ)から離れ、邪神バアルの影響を受けるようになります。
神はイスラエルの民に「彼ら(カナン)の神々にひれ伏したり、仕えたり、彼らの行いにならわず、彼らを打ち倒し、彼らの聖柱を破壊せよ」と命じます。
けれど民は偶像を崇拝。
そこで神はミディアン人とアマレク人その他のベドウィン族のイスラエル攻撃を7年の間許しました。
神に選ばれるギデオン
そして、敵軍の攻撃に勝利し、偶像礼拝を非難するための英雄にアビエゼル族の若者ギデオンを選びます。
主の天使(神)は麦の収穫をしていたギデオンの前に旅人の姿で現れ、テレビントの木陰に座り、ギデオンに語りかけます。
「勇敢な大男よ、主はあなたと共におられます」
「あなたは敵を打ち破り、イスラエルをミディアン人の手から救うであろう。」
ギデオンは自分のように弱く、臆病で、小さな部族の男が、救世主に選ばれることが信じられませんでした。
そこで、ギデオンは神に「あなたであるというしるしをお示しください。」と願います。
神が彼の犠牲を受け入れてくださる証に、ギデオンは天使の導きに従って、子ヤギとパンを岩の上に置きました。
主の天使が杖の先で犠牲に触れると、岩は炎で焼かれ、犠牲は消えてなくなりました。
「エルバアル」の名を授かる
それまで、ギデオンの家族もまた他の家族と同様に偶像を崇拝していました。
そこで神はまず、これまで崇めていたバアルの祭壇を破壊するよう命じます。
ギデオンはバアルの祭壇と聖木、女神アシェラの象徴を破壊し、その場にヤハウェの祭壇を築き、聖木で炎をたき、供物に『父のものである雄牛』をささげました。
そしてそれは、バアルに忠誠を誓う周囲の民を恐れ、夜に行われました。
翌朝、ギデオンの所業を知った民は怒りました。
その時、ギデオンの父ヨアシュが「バアルが自らの祭壇を守れないなら、民も彼を守ることはできない」と民を説得。
ギデオンは エルバアル(バアルは自ら争えばよい)の名を授かりました。
ギデオンはもう一つのしるしを求めました。
そこで神は羊毛に2つのしるしを示されます。
朝、目を覚ましたギデオンは、羊毛が露で覆われているのに周囲の地面は乾いた状態の不自然さを目にします。
翌朝には逆に、羊毛は乾いているのに、周囲の地面は露で覆われています。
ギデオンは神が意思を示されたこの奇跡を受け入れます。
選ばれた300人の軍
ギデオンは、アシェル、ゼブルン、ナフタリ、そして自身のマナセの各部族の兵士3万2千人を集結。
敵は「モレの丘」、ギデオンの軍隊は「エン・ハロド」に陣を置き、ミディアンとアマレクの軍隊を迎え撃ちます。
この時、ミディアン人の軍隊は「海辺の砂のように大勢」の兵士を従える大軍、圧倒的にギデオンの軍に勝っていました。
けれど神はギデオンに兵士が多すぎると告げます。
神はまず、戦いを恐れる兵士を帰すよう指示。
ギデオンは「去りたい者は去ってよい」と兵に告げ、2万2千人が家に帰り、1万人が残ります。
けれど神はまだ多すぎると告げ、兵士たちを水辺で水を飲ませるように指示します。
そうして、ひざまずいて水を飲む者と、手で水をすくって飲むものとを分け、両手で水すくった300人だけが残ることを許されました。
戦闘
神はギデオンに、夜に敵の陣営を偵察するよう指示します。
ギデオンはそこで、敵兵が友人に「大麦パンが陣営に転がり込んで 、テントが倒壊した」夢を見たと話しているのを聞きました。
ギデオンは陣営に戻り、兵士にショファール(ラッパ)と中に松明を隠した土瓶を持たせました。
兵を3つの部隊に分け、それぞれにラッパを吹き鳴らし、雄叫びを上げ、松明に火を灯し、大軍による攻撃にみせかけるよう指示。
ギデオンと300人の部下は一斉に敵の陣営に向かって進みます。
そうしてギデオン軍は敵軍を取り囲み、ラッパを吹き鳴らし、「主の剣、ギデオンの剣!」と叫びました。
神はミディアン兵をパニックに陥らせ、各人の剣をその仲間に向けさせました。
そしてついに、敵兵は逃げ去ってゆきました
この戦闘で死亡したミディアン兵は十二万人を数えられました。
ギデオンと三百人の兵はさらにミディアン人の二人の王ゼバとザルムナを追撃。
その途中、スコトとペヌエルの二つの都市で、ギデオンは兵のため追撃の糧食を求めますが、スコテとペニエルの人々はそれを拒否、ギデオンを嘲笑します。
ギデオンはカルコルで二人の王、ゼバとツァルムナを捉えます。
その帰途、二人の王はスコトとペヌエルの住民の前に示され、ペニエルの塔を倒し、そこにいたすべての人々を処刑。二つの都市は滅ぼされました。
そして、ミディアン人の二人の王ゼバとザルムナも処刑されます。
勝利の後
勝利を得たイスラエル人はギデオンに王として王朝を築くよう願いますが、ギデオンは「神だけが彼らの支配者である」とこれを拒否。
戦いで獲得した金でエポデ(司祭の衣装)を作り続けました。
ギデオンはまた多くの女性を妻に迎え、70人の息子をもうけています。
ギデオン在命の40年の間、イスラエルには平和が続きます。
ギデオンが老齢で亡くなると、ギデオンの息子アビメレクが他の息子たちを殺害し、シケムで王の座に就きます。
そして、イスラエル人は再び偽りの神バアル・ベリト崇拝に戻ることになります。
ギデオン、ディズニーファンにはお馴染み
『STARWARS』シリーズモフ・ギデオンは帝国軍の残党を率いる指揮官
「千の涙の夜」で手に入れたダークセーバーを武器に、マンドーとの死闘はseason2のラストのを飾る名シーン。
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ディズニー映画『ピノキオ』のギデオンはキツネの詐欺師ファウルフェローの相棒でドジなイタズラ猫。
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ディズニー映画『ズートピア』に登場するギデオン・グレイはバニーバロウで主人公の新米警察官・ジュディの両親と商売をしているアカギツネのパイ職人
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『クリミナル・マインド』のジェイソン・ギデオンは初代BAUのベテランプロファイラー。
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ギデオン まとめ
士師記の中のイスラエル人は何度も同じ過ちを繰り返す、いささか節操のない民のようにも思いますが、流浪の民がたどり着いた地の文化や思想に影響されるのも無理からぬことのようにも思います。
そして、そんな同じ過ちを繰り返す民を見捨てず導く神の深い恩恵も垣間見れます。