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オシーン、ケルト版浦島太郎になったフィアナ騎士団の戦士

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フランソワ・パスカル・シモン・ジェラール作『ハープ演奏をするオシアン』1801年

ケルト神話の中に『浦島太郎』に酷似した物語があります。

『ティル・ナ・ノーグのオイシン』

この中で、浦島太郎になるのはフィン・マックールの息子でフィアナ騎士団の英雄・オシーン。

詩人でもある見目麗しい戦士です。

 

父・フィン・マックール同様数奇な生涯を辿る

オシーンとその物語とは

 

 

オシーン、ティル・ナ・ノーグの王になったフィン・マックールの子

オシーンとは

オシーン(Oisín オシアン)はフィアナ騎士団の英雄フィン・マックール(フィオン・マク・カムハイル)とフィンの最初の妻・サーバ(サドブ)の子

 

フィアナ戦士団の英雄であり、アイルランド伝説で最も優れた詩人

アイルランド神話のフィン物語群(フェニアン・サイクル)の多くの物語の作者で語り部です。

オシーンの名前は「小鹿」を意味します。

その名の通り、鹿のようにしなやかな身体と、金の髪、緑の瞳の美しい容姿を持つ戦士

海神・マナナン・マク・リルの娘ニアムに招かれ「常若の国」ティル・ナ・ノーグの王になる、父フィン・マックール同様、数奇な人生をたどります。

 

フィン物語群とは 

 

フィン物語群は、フィアナ騎士団のメンバーとその団長フィン・マックールの活躍を語る、アイルランド文学の一群

  • 神話物語群 キリスト教以前のアイルランドの異教の神話
  • アルスター物語群 英雄クー・フーリンが中心
  • 王物語群 歴代王や民族の起源を語る

アイルランド神話の4つのグループのうちのひとつ。

アルスター物語群と王物語群の間、3番目の物語として構成されています。

 

この中には

  • ディルムッド・オディナ フィンの妃との恋愛のため非業の死を遂げた英雄
  • カイルテ(キールタ・マック・ロナン、フィンの甥。驚異的なスピードで走り、動物と意思疎通ができる詩人
  • オスカル、オシーンの息子。勇猛果敢な戦士。ディルムッドの親友。ガウラの戦いの傷が致命傷となって死亡。
  • ゴル・マック・モルナ フィンのライバル

 

その他の有名なフィアナのメンバーに関する物語も含まれています

 

オシーンの出生 

オシーンの母サーバ(サドブ)は闇のドルイド、フィア・ドイリッチの愛を拒絶

魔法(あるいは呪い)で鹿に変えられてしまいます

森で狩をしているオシーンの父フィン・マックールと出会い、人間の姿を取り戻します

その後ふたりは結ばれ、深く愛し合い、サーバ(サドブ)はオシーンを身籠ります

けれど、フィンが留守にしている間にサーバ(サドブ)は闇のドルイドに連れ去られ、再び鹿に戻されてしまいます

フィンは7年の間妻を探し求め、ある日森で野生の少年に出逢います(他の物語では大人になったオシーンに出会います)。

 

サーバ(サドブ)の面影を残したその少年を自分の息子であることを確信したフィンはその少年を連れ帰り、オシーン(子鹿)と名付けました

 

ティル・ナ・ノーグのオイシン』

アルバート・ヘルター作1899年

『ティル・ナ・ノーグのオイシン』はフィン物語群の中で最も有名な物語です。

 

あらすじ

パトリック・リンチ作

ニアムニァヴ)・チン・オールの結婚

ティル・ナ・ノーグの伝統では、7 年ごとに現王に挑戦者が戦いを挑み、勝者がその地を治めると定められていました。

王(海神・マナナン・マク・リル)は王座を奪われることを恐れ、ドルイド僧にその運命を尋ねます。

僧は、「義理の息子が戦いを挑まない限り、王の統治は続く」と告げます。

そのため、王は未婚の娘ニアム(ニァヴ)の頭をドルイド僧の魔法で豚に変えてしまいます

 

それを嘆いたニアム(ニァヴ)は僧を訪れ、元に戻る方法を尋ねます。

僧はニアムニァヴ)にフィン・マックールの息子と結婚すれば戻れると告げます。

 

ニアム(ニァヴ)との出会い

ある日フィンとオシーンは騎士たちと森で狩りをしていました。

そこにニアムが現れます。

ニアムはオシーンに

一緒にティル・ナ・ノーグへお越しください。ティル・ナ・ノーグは永遠の若さと喜びの国、富にあふれ、食物や酒も絶えることなく、木々には果実が、大地には花々が咲き乱れているところです。

あなたはティル・ナ・ノーグの王となって、永遠の若さと喜びにあふれた国を治めるのです』と語ります。

(他の物語では白馬に乗った金の王冠をつけ豪華な衣装を纏った美しい乙女が現れ、オシーンは一目で彼女に心を奪われます。)

 

オシーンはこれを承諾

父フィンはもう二度と会えないだろうと嘆きましたが、オシーンはすぐに帰ってくるからと約束し出発

 

 ティル・ナ・ノーグに行くオシーン

ふたりはティル・ナ・ノーグ(常若の国)に向かいます。

ふたりを乗せた白馬は雲をこえ、海の上を駆け続けました。

そうしている間に、日の光の彼方に美しい花が咲く緑の大地、そしてまばゆい宝石で飾られた豪華な宮殿が見えます。

 

ティル・ナ・ノーグについた二人は結婚。

ニアムは元の姿を取り戻し、オシーンは王位を勝ち取ります

 

ふたりは、後にフィアナの騎士となったオスカー、娘プロル・ナ・バン、次男フィンをもうけます

 

オシーンは3年その地で暮らしました

けれど父や友人たちに会いたくなったオシーンは一度故郷に帰りたいとニアムに頼みます。

ニアムは

『フィアナの騎士団はすでになく、エリンはもうあなたの知っているエリンではありませんこの白馬がエリンへお連れしますが、どうか白馬からは降りないでください。足が地に触れた瞬間、二度とここへは戻ってこれません』と告げます。

オシーンはきつくニアムに約束し、白馬に乗って再びエリンの海岸に辿り着きました。

 

故郷への帰還

けれど懐かしい故郷はな、館があったアレンの丘には見覚えのある廃墟が建っていました。

野や山も小さく縮んでしまったように見えます。

そして見慣れない小さい人々が小さな馬に乗ってやってくるのに出会いました。

オシーンはその人たちに父フィンとフィアナの騎士たちのことを尋ねました。

すると彼らは

ずっと昔にいたフィアナという騎士団と英雄フィンのことは伝説で知っています。息子のオシーンは妖精の娘と常若の国へ行ってしまい、とうとう帰ってこなかったということです』と答えました。

 

悲しみの中途方に暮れていると、大きな磐石を動かそうと難儀している人たちに出会いました。

オシーンは下敷きになった小さい人を助け出し、そのとき不運にも落馬して両足を地面につけてしまいます

その瞬間白馬は高くいななくと同時に去り、そのとたんオシーンの体に恐ろしい変化が起こります

目がかすんで見えなくなり、若さが消えてしわくちゃの老人になってしまったのです。

その後再び白馬が現れることもなく、オシーンは老いた老人のまま、昔の仲間や優しかったニアムのことを偲んで暮らしました

(他の物語では、彼は瞬く間に年老いて、老衰で亡くなり、塵と化しています

 

 

オシーン まとめ

スティーブン・リード作(1910年)

浦島太郎もオシーンも両方ともに時間の経過が人間の世界とは違うということを知らずに訪れています。

こうなる結末を知って、それでも行こうと思ったのかどうか、気になるところです。

そして、亀も王女様も、先にそれを告げずに連れて行ったのは、それってやっぱり反則ですよね

 

まあ、甘い話には大抵は裏があるものですが。。

 

 

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