ラファエロ サンツィオ ダ ウルビーノ作16 世紀
ミカエルはキリスト教においてはガブリエル、ラファエルと並ぶ三大天使のひとりであり、天使の長として君臨する大天使。
悪魔ルシファーの兄弟にしてルシファーを征する天使団を率いる熾天使。
モーゼやジャンヌダルクにも啓示を与えたとされるミカエルのこれまでの功績にも注目です。
美しくも勇ましい大天使ミカエル、守護聖人と称される由縁に迫ります。
目次
ミカエル 人々を守り、悪魔と戦う熾天使
ボッティチーニ作、1470年
ミカエル（ Michael）は旧約聖書『ダニエル書』、外典『エノク書』、新約聖書『ユダの手紙』『ヨハネの黙示録』で語られる「熾天使」、最も偉大な天使です。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教において三大天使・四大天使・七大天使のひとり。
ユダヤ教ではメタトロンやラドゥエリエル、キリスト教ではガブリエル、ラファエルらとともにもっとも強い権限を持つ天使。
最古の天使のひとりでもある神の左手。
その名は「神の如き者」を意味します。
かつては神の右手であった堕天使ルシファーとは双子の兄弟。
傲りによってルシファーが堕天したのち、ルシファーの任を担い、その役割を果たします。
ミカエルの使命
グイド・レーニ作
大天使ミカエルは、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の宗教で、全ての天使の中で最も偉大な天使。
● 悪魔と戦い、正義と平和を守る
ミカエルの肖像画の多くには「剣」を持ち、竜を踏み、従わせる姿が描かれています。
これは、竜であるサタン（悪魔）と戦い、正義と平和を守るという姿が描かれています。
新約聖書の「ヨハネの黙示録」において、ミカエルは「天使の大軍」を率いてサタン（悪魔）と戦います。
● 正義の秤で死後の魂を正しく導く
ハンス・メムリンク作 15世紀
また、ミカエルは右手に「剣」、左手に「天秤」を持つ姿で描かれていることもあります。
これは、ミカエルが死後の人間の魂を正義の秤で正しく計るという意味。
ミカエルの大切な役割である、死者の魂を正しく次の世界へ導くという使命を果たしているのです。
ミカエルの功績
クリストバル・デ・ビジャルパンド作、1686年
双子の兄弟・ルシファーと戦い勝利した伝説
サタン（悪魔）ルシファーは、ミカエルの双子の兄弟で、もともとは最も高い位にあった大天使でした。
ルシファーは、神が人間であるアダムを寵愛することに嫉妬し、神に敵意を示し、自分に賛同するものとともに大天使ミカエルの率いる神の軍団と開戦。ミカエルは兄に勝利し、ルシファーは仲間とともに地獄に堕ち、サタン（悪魔）となりました。
『ヨハネの黙示録』では、ラッパを吹き、サタンとの最終戦争を戦うのはミカエルであると告げています。
ロトやアブラハム、モーセに与えた啓示
旧約聖書においてミカエルは様々な場所に現れて、重要な啓示を与えています。
滅びゆく背徳の街ソドムに遣わされた2人の天使のひとりはミカエル。ロトは彼らをもてなし、命を救われています。
アブラハムを訪れて、重要な予言をする「3人の旅人」のひとりでもあります。その後、神の試練を受け、息子イサクを生贄に捧げようとするのを止めるのもミカエル。
イスラエルの民を導くモーセを教え諭し、イスラエルに侵攻するセンナケリブの軍勢を打ち破ったのもミカエルであると伝えられています。
ジャンヌ・ダルクに与えた啓示
15世紀のヨーロッパ、フランスとイギリスの百年戦争で、ミカエルは農民の娘ジャンヌ・ダルクに「フランスの解放のために戦え」と神のお告げを与えます。
ジャンヌの功績でフランスはイギリスに勝利。
そのフランスの裏切りでイギリス軍に捕らえられたジャンヌは処刑されます。
けれどその後には聖人の位を与えられ、フランスの守護聖人となります。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の中のミカエル
フアン・デ・ラ・アバディア作 1486年頃
ミカエルはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の偉大な天使。
それぞれに独自の存在としての役割を担います。
キリスト教のミカエル
カトリック教会でのミカエルは「大天使聖ミカエル」
これは中世には大天使が天使の最高位であったため。
ミカエルは、右手に剣、左手に秤を持つ天使。
ガブリエル、ラファエルと並ぶ三大天使の一人です。
中世でのミカエルはキリスト教軍の守護者として十字軍の崇拝を得ます。
また、治癒者としても信仰されます。
6 世紀のローマでは、病める人々がカステル・サンタンジェロの教会で治療者ミカエルに祈りを捧げたといいます。
カトリックの教えでは、聖ミカエルは 4 つの役割を担います。
- 悪魔の力を駆逐する天国の軍隊の指導者
- 信仰者の魂を天国に導く死の天使 ミカエルは死の瞬間に降臨し、死者の魂にこれまでの行いを顧みる機会を与えます
- 秤で魂の重さを量り、死者を正しく来世に導きます
- 教会の守護者であり、多くの都市や国の守護聖人
イスラム教のミカエル
アンドレイ・ルブレフ作
イスラム教でのミカエルは「ミーカール」
天界から世界を見守る、この世の恒久性を守護する天使。
エメラルド色の翼、サフラン色の体毛、その体毛一本一本に百万の顔を持つ異形の天使として描かれます。
イスラム教のミーカールは四大天使ジブリール、アズラーイール、イスラーフィールのひとり。『クルアーン（コーランイスラム教の聖典）』にも記述されています。
けれど、イスラム教でのミーカールは、ジブリール（ガブリエル）に次ぐ天使。
最後の審判が来るまで世界の守護を務めます。
ミーカールは地獄の罪人の苦しみを嘆き、笑うことが無くなったとされます。
アッラーへ罪人の恩赦を乞い、アッラーはその慈悲深さを貴びます。
そして、彼の目から流れる涙を天使に変え、第七天にミーカールと共に住まわせます。
ユダヤ教のミカエル
イスラエルのミカエルは『ダニエル書』に登場する聖人・ダニエルの幻の中にペルシアの天使たちと戦うためにつかわされたイスラエルの守護者として出現します。
その中からミカエルと堕天使サマエルとの争いという伝承が生まれています。
サマエルが堕天使として天国から落ちてゆく際ミカエルの翼を掴み、ミカエルは神によって救い上げられたといわれます。
エノク書[のミカエルは七大天使のひとり。
- 神に叛逆した王ニムロッドによって炉に投げ込まれたアブラハムを救出
- ロトが捕虜になったことをアブラハムに伝え
- 母親の胎内にいたヤコブをサマエルによる死から救出。
- ラバンがヤコブに危害を加えるのを阻止
- イスラエルの民の出エジプト助け、センナケリブの軍隊を破壊
などの役割を果たしています。
また、エルサレムへユダヤ教徒の魂を迎え入れ、終末のときにラッパを吹き鳴らす役目を担います。
ミカエル、現代でも最も偉大な天使
「グランブルファンタジー」では天司長ルシフェルに次ぐリーダー。火の星晶獣シヴァを従える天司と呼ばれる原初の星晶獣であり、火の元素を司る「四大天司」のひとり。
ーーーーーーーーーーーー
「スーパーナチュラル」でのミカエルはシーズン5で登場。デーンとサムの異母兄弟を器とし、ルシファーの器となったサムとともに奈落に落ちます。
ーーーーーーーーーーーー
「ロマンシングサガ リ・ユニバース」のミカエル・アウスバッハ・フォン・ロアーヌは「ロアーヌ侯国」の王。不死（ゾンビ系）のモンスターに対しての特攻、威力SSの単体攻撃「サザンクロス」を発動します。
ーーーーーーーーーーー
ミカエル まとめ
ミゲル・ヒメーネス作
天使って、キューピットとイメージが重なって、悪人も許されて天界に登れる、善を象徴するようなイメージがありました。
けれど、実際（？）の天使は、魂の重さを計るっていうのは、これは怖い。
美しくても西洋版閻魔様のような存在なようで。。。。
